年商8000万円
従業員8名
独立開業したものの、なかなか顧客様が増えずに苦悩しておりました。
以前いたお店よりも本格的な料理を提供できるレストランを目指していたので、多くの融資を受け、店内の調度品や食器に至るまで高級感のあるお店づくりを目指しました。そのため客単価も以前よりも上げて挑戦していました。それだけの価格に見合う価値を提供しているという自信はありました。
しかし、以前のお店から応援してくれているお客様がポツポツ来てくれるものの、売上は上がらず、借入の返済が多く非常に苦しい思いをしていました。
やはり、価格が高すぎるのだと思い途中から価格を下げたコースプランに変更をし、新規のお客様を増やすため、チラシを作ってポスティングしたり、クーポンを発行したりしました。
仲間のお店にチラシを置かせてもらったりもしました。やはり動いて汗をかくしかないと、頭を下げ必死に営業活動しましたが、結果は出ませんでした。
むしろさらに来客は減ってしまいました。
お客様が本当に求めているもの
もうお店を手放して再出発すべきかどうかを考えているようなときに知人の紹介でインサイトマジックの新島さんとお会いする機会がありました。
そこで「顧客様が本当に何を求めているか理解できていますか」という質問をされ、頭が真っ白になりました。
「美味しいご飯を食べに来ているのでは」
と思ったのですが、新島さんの質問はもっと深いものでした。
「美味しいご飯なら他にも食べられますよね。外食はもはやどこにいてもだいたいは美味しいものです。でもその美味しいご飯にあえて何万円も出して食べに来てくれるお客様がいるわけです。彼らはどうして来てくれているのでしょうか?」
そしてインサイトマジックさんが出されている顧客インサイトレポートを読みました。
飲食に限らずどんな商売でもお客様がモノを買うには様々な本音があることがわかりました。
そこでこれを最後の勝負にしようと決意し、インサイトマジックさんに助言を頂きながら、私たちのお店に来てくれるお客様にお話を聞いていきました。
お客様に直接、聞く
正直どのように聞いていいかもわからず、難しかったです。でも、私たちに合った質問のリストや流れ、質問の技術をレクチャーいただきながら少しずつお客様とお話していく日が続いていきました。
これほど、お客様と向き合った日々もなかったと思います。
お客様を感動させたいと思い、料理の道に進みましたが、いつの日か自分のやりたいことをお客様に押し付けていたのではないかとすら思えたのです。
そしてついにその日が来ました。
以前のお店から私を可愛がってくれて新しいお店にも来てくださっているお客様とお話しているときでした。
「お手頃なコース作ったでしょう。あれ見たときもうここには来ないと思ったよ」 と仰られたのです。
「あなたにそういうのは求めていないの。特別な空間、特別な時間を楽しみたくて来ているの。そういうのが無くなっていくならもう行きたくないと思ったからだよ。」
このお言葉をいただいたときに、これまでの失敗が私の中でつながりました。そうか、だから価格を安くしたり、頭下げて勧誘したりしたときにさらに来客が減ったのか、お客様は私にそういうことをしてほしくなかったんだと。
特別なお店に行って、特別な時間を過ごす、ここはいつものような日常から離れる場所。
だからクーポンや、お求めやすいコースといった日常を感じさせる取り組みや、私が汗をかいて動きまわってる姿がお客様が求めているイメージと違っていたのだと。
お客様のお言葉から確信に
このお言葉の後に、他のお客様から同様の意見をいただき確信がもてました。
ここから、ありったけの資金を集め、特別な空間、料理を提供できるように妥協や、迷いを消し、それに集中していきました。
やはり価格は高めだったため、すぐにお客様が増えることはありませんでした。
それはそれは苦しかったです。
しかし、ここは特別な場所で特別な料理が食べられるというイメージが少しずつ定着し、まずリピーターが増えました。そしてリピーターがご紹介してくださり、少しずつ黒字化に向かっていきました。
半年後には全席予約で埋まる日もでき、年末の繁忙期は予約が取れないところまで行くことができました。
この経験を活かし、お客様が求めていることを基準にして、ランチメニューや飲料のラインナップ、デザートプランなどを考えていき、新たな新規顧客も開拓できるようになりました。
デートでランチに来られたお客様が、プロポーズのためにディナーでご来店いただいたときはとても嬉しかったです。
飲食は浮き沈みが激しく、競争も厳しい業界です。
その後もいろいろな困難がありましたが、悩んだらお客様と向きあうことを大事な指針として頑張っています。